風の果て〈上〉 (文春文庫)



風の果て〈上〉 (文春文庫)
風の果て〈上〉 (文春文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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ここに描かれているのは現代の我々だ

組織の中でたくましく生き抜き、より高い生活を目指すと非情にならざるを得ず、それを追っていくとどこからか自分を呼び戻そうとする声が聞こえる。「お前はもっと純粋で、人への思いやりがあったではないか」と。その声の主は少年時代の自分であり、貧しくとも素朴で温かい心を持ち続けている友であったりもする。栄華を極めてもなお足るを知らない人間の寂しさ、むなしさは現代の我々に通じるものです。あえて甘さを加えないようにしたことできりっとした見事な作品に仕上がっています。過去と現在を行き来しながら、人の移り変わりを描く構成力、洞察力はすばらしいと思います。NHKの佐藤浩市主演のドラマも上出来でした。蝉しぐれもいい作品ですが、60歳代になった私はどちらかといえば風の果ての方が好きです。
仲間の良さと維持することの難しさ

代小説ではあるが、現代にも通じる話です。

主人公は隼太(桑山又左衛門)ですが、話は隼太と言っていた、まだ養子に行く前の仲間たちとの話です。一緒に飲み食いし、一緒にいたづらをし、同じ女性に憧れた、そんな気の置ける仲間たちです。その彼らが成長し、それぞれの役割を持ち、立場も違ってきます。主人公が家老職についた時、何人かは死んでおり、仲間を蹴落としたり、ある者とは決闘をし死なせてしまいます。この仲間に対する意識とその変化の様子が、全編に描かれています。読んでゆく内に、仲間というものの良さと同時に、それを維持することの難しさを感じさせてくれます。

作品は、主人公が家老でありながら、昔の仲間の決闘を受けるところと、若い頃の仲間たちの様子が交互に描かれます。この構成の上手さが先ず目に付きます。
それと、描写の見事さで、この名もない藩の風景が手に取るようです。
こうした作者の小説家としての力が、一気呵成に読ませる作品を作るのでしょう。
秀逸

同じ道場に通う武家の若者たち。一人を除いて下士の次三男である彼らの対照的な人生が、ときに交差しながら続いていく様子が静かに描き出され、読む者を惹きつけて離しません。
「友」という存在が一義的なものでなく、人間関係は時間の経過とともに役割が入れ替わって続く微妙なもので、いつの世も人生は複雑なのものだと教えられる気がします。
ドラマが始まったので急いで読み始めましたが、慌てて損したという位一気に読めました。

読みだしたら止まらない!いっきに上・下巻!!

本年秋10/18?12/6毎週木曜
TV放映予定とのこと
NHK時代劇(全8回)
佐藤浩市・石田えり・仲村トオル

ここしばらく短編集ばかりだったので、
腰を落ち着けてじっくり読める、と思いきや
一旦読みはじめたら止まらなくなった。
寝る間を惜しんで、一気に読んだ。

ものすごい壮大な小説。
多分、藤沢周平が書く初めての本ではないか?
1人間の 幼少から老齢に至るまでの半生を描いたのは。
それも1人ではなく、
道場同期入門、身分のまったく異なる5人 それぞれの人生だ。

幼少の頃は身分が違っても同じように分け隔てなく遊ぶ。
但し、物心のつく若者になると先々が自ずと見えてくる。
武士の社会は家柄、毛並みで、生まれた時から先が見えている。
1千石の上士跡取りを除いた、残り4人は、親の身分もさほど高くない(160石、130石、82石、35石)しかも次男、三男の部屋住み。ゆくゆくは同じような身分の家の養子に入れれば御の字のしがない身分。

家中の世界は、「上士と下士は同席せず」。
これがこの本のテーマのひとつ。

さて、1千石の上士跡取り「鹿之助」はあっという間に登りつめ、雲の上の筆頭“家老”。
残りの4人はさて、如何に?
・養子になり姓も変わり、またその名も受け継ぎ姓・名が変わるもの、
・あるいは、とんでもない後家の家に入り、その身を追われるもの
・ 貧乏下士で汗水流すもそれなりに穏やかなもの
・ 剣の道で裏街道をいくもの
そして、主人公は・・・

下士の養子からいっきに上り詰め、昔の仲間「1千石の上士跡取り」と真っ向勝負。
そこには昔の友の情けは無い、
あるのは天下取り、藩政を動かす「地位」だ。

主人公が、上士と真っ向勝負で上へ上へと上り詰めていく様は実に面白い。
その時々の役職を追っていくのも勉強になる。
「なんだ?“代官”ってこのくらいの地位なの?」
「あれ?30石ってこんななの?これじゃ“武士の一分”の木村拓哉の家はありえないジャン?」
「藩政は正に内閣で、熾烈な派閥争いだな」
などなど
大変面白く、わくわく、ドキドキしながら読みました。

但し、「下巻」最後の10ページは、
泣き場所を確保して、バックグランドに壮大なクラシック音楽をかけながら読むことをお勧めします。

ちなみに私、最後の10ページは、帰宅途中の地下鉄の中。
バックグランド・ミュージックは「善き人のソナタ」のサントラ
これが妙にバッチリ合って、思わずほろほろ来ました。

■ お薦め度:★★★★★(超・お薦め)
*上・下本で躊躇する方もいると思われますが、シドニー・シェルダン同様、読み始めたら止まりません。覚悟のほどを!

あのころは何だったのだ。

 誰にでも思い出せば、一緒に成長してきた人間はいるものだ。子供のころがよかったなんて幻想だ。子供のころから人の生き方、在り様は不平等なものだ。その事を大人の世界としてみながら、やはり自分もその中でやるせなさや苛立ちを感じ生きていく。そのころの経験の一つ一つをかみ締め大人になっていく。そして気がついてみると一緒に成長して来た道は気がつかぬ間にいくつもの分岐点があり、もう後戻りできないばらばらな生き方をしている。「何で親友と命のやり取りをしなければいけないのだ」という主人公の詠嘆に先に向かって歩むしかない人生の儚さと力強さを感じた。



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